1 :2022/01/09(日) 22:05:12.74 ID:csp5Lte89.net
「時間」とはどういうものか、その存在ははっきりしない、と言われると戸惑ってしまうだろう。しかし脳科学分野では、「時間とは私たちの脳が作り出している産物だ」と喝破する研究結果がある。
大阪大学医学部教授の北澤茂さんは、様々な時制を含んだ文章(例えば「昨日、本を読んだ」など)を被検者に聞かせ、同時に脳の各部の血流を測ってみた。すると「現在」にかかわる時制を含む文章を聞いたときだけ、有意に多くの血流が生じた場所が見つかった。
そこは大脳の内側面にある楔前部(けつぜんぶ)という場所で、例えば「今、カレーを食べる」など、現在に関わる文章を聞くことで、その部分が強く活性化されたのだ。楔前部は海馬と太い神経でつながっており、楔前部に入った情報はすぐに海馬で記憶される。
その記憶が順番に積み重なっていくことを、私たちは「時間の流れ」だと感じているのだと北澤さんは考えた。つまり「時間」という概念に流れの実体は存在せず、脳には「現在」のことだけを強く認識する場所があり、その現在の情報を順番に記憶することで過去からの流れが生まれ、その延長として未来への期待という時間の流れが出来上がっていく、というのだ。
実は楔前部は、認知症を引き起こす原因と考えられているアミロイドβタンパク質が最初にたまっていく場所でもある。認知症は、最初に時間の認識が阻害されて進行する。認知症かどうかを判断するための最初の問いかけは「今日は何月何日ですか」という問いかけだそうだ。
北澤さんは、この楔前部の機能が阻害されることで認知症の初期症状が引き起こされるのではないかと考えている。「現在」を意識する楔前部こそが、時間を生み出している脳の司令塔だった。時間とは、脳の中で作り上げられる概念だというのだ。
「時間の矢」は物理学にも存在しない!?
一方、時間と縁の深い学問である物理学では、時間はどう扱われるのだろうか。理論物理学や素粒子物理学が専門の慶應義塾大学教授・松浦壮さんに聞いてみると驚きの答えが返ってきた。
何と、私たちが感じている「川のように上流から下流へと一方向に流れていく時間」というものは物理学の法則では定義されず、「時間の矢」というものも存在しないというのだ。
物理学の基本法則では「時間」が式の中に現れ、議論が進む。しかし、時間を式の中で反転させ、マイナス方向へ動くことを仮定しても、実は運動は全く同じ運動方程式で語られることとなる。このあたりは「式の変形」により語られるため、詳細はNHKオンデマンドをご覧いただきたい。
つまり、その物体の運動が「未来へと進む時間の動き」なのか、それとも「過去へと戻る時間での運動」なのかは、式の上では区別が付かないというのだ。落として割れた花瓶が、元の姿に戻りながら元の高さへと上がってくる、というのは時間が反転する世界でしか起きないと思えるが、物理学の法則が語る範囲ではどちらも可能で、何の不思議でもない運動だという。
ただし、花瓶が元に戻る確率は、天文学的な数字を遥かに超えた「ほとんど起こらないこと」であり、バラバラになる方が圧倒的に高い確率で起こる。このことから「時間の矢」は、確率的に物事はバラバラになりやすい、という性質の中に隠れているという。
「時間」は空間と混じりあっていた!
物理学では「時間」について何がわかっているのか、改めて松浦さんに聞いてみると、時間とは「空間と混じり合ったもの」だという。
そこで今回、松浦さんと議論を重ね「時間と空間は混じり合っている」ことを紹介するために、アインシュタインが作り上げた特殊相対性理論をひもとく、ある試みを行った。詳細はこちらもオンデマンドをご覧いただきたいが、その結果見えてきたのは「時間」と「空間」が不可分であることを示す、「時空」という時間の姿だった。
古代中国の書物・淮南子には「往古来今、之を宙といい、四方上下、之を宇という」とある。来し方行く末の「時間の流れ」が「宙」で、四方上下の「空間」が「宇」だという。それが合わさった「宇宙」とは、時間と空間が混じったものであることを意味する言葉だ。昔から私たちの祖先は、時間と空間は混じりあったものであることを知っていたのかもしれない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ed1a37909f4880705e050484f7d08c432ddd8f9?page=5