1 :2024/04/23(火) 07:17:36.71 ID:lYPF3I+N9.net
アイヌ民族の文化やDNAの研究に関し、先住民族としての権利や尊厳を定めた研究倫理指針の最終案が公表された。日本人類学会などが作成し、盗掘や遺族の同意を得ていない遺骨の利用を禁じることなどを明記したが、植民地主義に根差した過去の不正義に対する「謝罪」はない。「研究ありき」の姿勢も維持したままで世界の潮流からは程遠い内容だ。日本の研究者たちが掲げてきた「学問の自由」の暴力性について考えた。(木原育子)
◆「私たちにも研究されない権利がある」
13日、指針の最終案が公表された札幌市内の集会。アイヌ民族の木村二三夫さん(75)=北海道平取町=の野太い声が会場に響いた。「アイヌ民族の自己決定権が保障されずに、研究倫理指針が策定されるとすれば大問題だ」
道アイヌ協会に属していない大多数のアイヌ民族と、案をまとめた研究者が一堂に会する対話は初めて。遺骨返還運動をしてきた木村さんが呼びかけた。
集会の名は「アイヌネノアンアイヌ」。「人である人」「人間らしい人間」という意味だ。これまでの人権意識を欠く研究姿勢を見直し、「人間らしい学問のあり方」を、との願いがある。会場には90人近いアイヌ民族らが訪れ、4時間近く膝詰めの議論が繰り広げられた。
口火を切ったのは樺太アイヌ(エンチウ)の子孫らでつくる「エンチウ遺族会」会長の田沢守さん(69)。「なぜアイヌ民族だけ研究され続けるのか。研究者が研究する権利を保障されているなら、私たちも研究されない権利がある」
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千島列島の得撫島(ウルップトウ)生まれのアイヌ工芸家、成田得平さん(80)は「お墓から遺骨を盗むのは研究ではなく犯罪だ。研究者はアイヌ民族をまた、まな板にのっけようとする」と声を張り、アイヌ民族の権利保障を求め続けてきた石井ポンペさん(78)もアイヌ民族の死生観を語り「まずはアイヌ民族の今ある遺骨を土に返したい」と語った。
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浦河町のアイヌ民族、八重樫志仁(ゆきひと)さん(61)は「研究が前提になっている。和解もしていないのに『研究させろ』とは何事か」と憤り、白老町のアイヌ民族、八幡巴絵さん(40)も「研究対象ではなく、アイヌ民族をパートナーの位置付けに」と提案した。
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先住民族の遺骨は19世紀以降、頭骨の計測で人種の違いを探る人類学が盛んになり、人種に優劣をつける植民地政策の下、研究者に大量収集された。アイヌ民族は欧州とのつながりを指摘した学説で注目され、遺骨が国内外に散逸した。
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琉球人遺骨の返還を求める市民団体「ニライ・カナイぬ会」共同代表の仲村涼子さん(45)も集会に参加。指針案は研究する側、される側の立場が前提にあるとして「これこそ植民地主義だ」と訴えた。「遺骨返還のプロセスも国が判断し、決定権がアイヌにない。遺骨の問題はヤマトに責任がある。ヤマトが起こした問題はヤマトゥンチュが解決するべきだ」
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一方、人骨のDNA分析などを手がける日本人類学会の所属で東京大の近藤修准教授は「純粋な研究としてやったことを否定できない。許されないなら、私はここを立ち去るしかない」と意見を展開。明治期に墓地を掘り返すなどして多くの遺骨を収集した東京帝国大医科大(現東大医学部)の小金井良精(よしきよ)について「アイヌ研究の最も基盤となった礎だ」と主張すると、アイヌ民族から怒声が飛び、日本文化人類学会側も反論した。
立場の違いが鮮明になり、指針さえ定まらぬ様相だが、「知りたい」という学問的欲求と相対する人間の尊厳を、海外ではどう捉えているか。
「カナダでは博物館協会が1999年に倫理指針を作り、遺骨の返還方針を盛り込んだ。現在では先住民族の遺骨の所持自体が倫理的に問題だとして、先住民族と研究者が和解をし、パートナーシップを結んだ上で研究しようとしている」。そう説明するのはカナダの先住民研究に詳しい鹿児島純心大の広瀬健一郎教授。「先住民族の許可が得られない研究は、どんなに人類に必要な研究でも実施できないのは国際的な常識」。カナダだけでなく、先住民族のコミュニティーから許可を得ていない遺骨を用いた研究は一切認めない国際ジャーナルは増えている。(以下ソース)
2024年4月22日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/322683