1 :2024/01/14(日) 00:17:43.54 ID:DW6SJnTZ9.net
1月1日に発生した能登半島地震で甚大な被害が出ている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は
「被災地は、以前から大きな地震が頻発しており、一部の専門家から危険性も指摘されていたが、この地域への対策を重視したようには見えない。
誰も責任を取らない形で、なし崩しに『地方が見捨てられる』という状況が生まれつつあるのではないか」という――。
■新聞が見出しに掲げた「見えぬ全容」とは
能登半島地震から1週間が経った1月8日の朝日新聞は、1面の見出しに「見えぬ全容」と掲げた。
「全容」とは、何を指すのだろうか。
死者や行方不明者の数だろうか。孤立状態にある人数だろうか。
「全容」という言葉の「全容」が見えないのである。それほどまでに今回の災害は把握が難しい。
どこで、どんな被害が生じているのか。誰が、何に苦しんでいるのか。何が、どれぐらい足りないのか。
現地だけではなく、情報の中心地であるはずの東京でも、ほとんどわからないまま時間だけが過ぎていく。
情報が足りない。それ以上に、情報の不足具合すらわからない。
追い打ちをかけたのが、テレビやラジオの「停波」である。
発災から3日も経たない1月4日午後4時時点で、NHK(約700世帯)をはじめ、地元テレビ局の石川テレビ放送・テレビ金沢・HAB北陸朝日放送の3局が約730世帯、
北陸放送(MRO)では約2130世帯が影響を受けた。中継局の送信機が壊れたり、非常用電源のバッテリーが枯渇したりしたためである。
1月10日午前6時半時点の総務省の集計によると、石川県輪島市の地上波テレビではNHKが約700世帯、上記民放4局が約730世帯、
ラジオではNHKが約700世帯、MROは約6000世帯に影響が続いている。
災害時には、携帯電話の通信状況は悪くなり、テレビやラジオといった放送に頼る割合が大きくなる。そこに、停波が続く。
内容だけではなく、物理的にメディアが届かなくなった。
■民放がバラエティー番組やドラマを放送した理由
かねてメディアの東京一極集中は懸念され、批判されてきており、今回の地震でのテレビ局の対応を、そのひとつに挙げる見方もありえよう。
東京の民放のうちTBSを除く4局は、発生から数時間後には予定していた番組の放送へとニュースを切り替えたからである。
L字と呼ばれる、文字情報を流しながらではあるものの、バラエティー番組やドラマを流し始めた。
一見すると報道特別番組ではなく、お正月用の特番を放送するのは違和感がある。
公共の電波を使っている以上、一大事=大災害を報じなくてはならない、そんな理屈も成立しうる。
だからといって、そうした対応を非難したいのでは、まったくない。
ひとつめの理由は、どれだけの災害かわからなかったからであり、ふたつめには、災害以外にもテレビの公的な役割があるからである。
何が起きているのかわからない、それだけを伝え続けるよりも、気晴らしになったり、心を落ち着けたりするためにもニュース以外を流す。
そうした判断もまたあってしかるべきだろう。
問題は、そこにはない。
メディアの仕組みの面で、東京が地方を見捨てつつある、見捨てるしかない状況を見つめなければならない。
■AMラジオ放送を維持できない
地元民放のMROは、今年4月1日から、一部の地域でAMラジオ放送の運用を休止する。
総務省のウェブサイトでは9月末までの半年間となっているものの、同社のサイトには期限は書いていない。
同社のサイトには、AMでは金沢の周波数でカバーするほか、FMで補完できるとする地図が示されている。
これは、AMラジオ放送を続けるコストが負担できない、などの理由によるものであり、MROだけではなく、全国合計13社が休止を予定している。
今回の地震で甚大な損害を受けた地域は、まさに、このAM休止エリアに重なる。
これまで地方の民間放送局は、「ネットワーク費」や「電波料」、あるいは「ネット保証料」などとも呼ばれる分配金によって経営を安定させてきた。
■窮地に追い込まれたローカル局の経営
民放は、その収入の多くを広告費に頼っているが、昨今では、マスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を合わせた額(2兆3985億円)よりも、
インターネット(3兆912億円)のほうが多い。
特に地上波テレビの広告費は低下傾向が続いており、キー局からローカル局に支払える電波料も下がりはすれども、上がりはしない。
MRO自体、売上高は減少気味で、営業損益は広がっており、AMラジオ放送を続けられる体力がなくなってきているのだろう。
※略