1 :2023/04/04(火) 06:35:17.25 ID:dLdd/FlB9.net
「64歳? ノーだ」 スローガンをうたい上げる先導者に続き、横断幕を掲げた群衆が行進していく。
3月下旬、「デモの聖地」と呼ばれるパリの共和国広場。受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる政府の年金制度改革への抗議はやまず、大規模デモは10回目となった。暴徒を警戒する治安部隊も待機したが、約9万人が平和裏に抗議の声を上げた。
担任クラスの授業を休みにした小学校教諭ジョアンさん(44)は参加理由を「父のようになりたくないから」と打ち明けた。元建設会社員の父(62)は昨年に定年退職した後、体調を崩し生気を失った。「教職は好きだが、児童と真剣に向き合う日々を60代半ばまで続けたら、父のように何もできなくなる」。老後は趣味の絵画を楽しむつもりだ。
欧州連合(EU)の統計では年金受給はドイツやイタリアが67歳で始まる一方、フランスの62歳は最も低い。そのため年金財政は苦しく、2020年の支出は国内総生産(GDP)比15.9%と、加盟国で3番目に高い。
かつてフランスも受給開始は65歳だったが、左派が主導して1980年代に60歳へ引き下げ、90年代後半には週35時間労働制を実現した。「労働者天国」を勝ち取った自負がある労働組合や左派支持層などは、改革に激しく抵抗してきた。2010年に右派政権が62歳に引き上げた際もデモが続いた。
「仕事より余暇を重んじる伝統を植え付けた左派政権、長期ビジョンを持たず『これが最後だ』と改革を連発してきた右派政権の双方に、混乱の責任がある」。社会学者ジャンピエール・ルゴフ氏(74)が指摘する。「将来を楽観できない仏国民は、最後に残されたもの(62歳定年)を死守したいと願っている」
仏人は働きたがらない—。外国メディアはこんな表現を好むが、パリ政治学院のブルーノ・パリエ主任研究員(57)は「フランスの生産性は欧州随一だ」と反論する。週35時間の制約がある中で業務量は変わらないため、従業員が同じ時間内でこなすべき業務量は逆に増えた。
一方、企業は中高年にも同じ仕事量を求める。こなせない人は解雇されるか早期退職の道を選ばざるを得ない。シニア世代(55~64歳)の21年の就業率は56%で、77%のスウェーデンや72%のドイツとは大差がある。
政府は今回の改革で30年までに177億ユーロ(約2兆5000億円)の増収を見込む。しかしシニア世代の2人に1人が働かない現状を変えないと効果はないと指摘する声も多い。
パリエ氏は言う。「見直すべき公的支出は多いのにマクロン大統領は性急な手法を選んだ。国民との緊張を解く鍵は彼だけが握る」(パリ・谷悠己、写真も)
フランスの年金制度改革 受給開始年齢を段階的に引き上げるほか、積立期間を変更し、公営企業の優遇も大部分で廃止する。改革案が発表された1月から抗議デモが続くが、関連法案は3月20日に成立。現在は違憲審査が進む。マクロン大統領は改革を選挙公約に掲げ、20年の改革案は反対運動の末、新型コロナウイルス禍で撤回された。
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フランスで年金制度改革への抗議デモが続く。その背景をひもとき、将来の展望を探る。
東京新聞 2023年4月4日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/241916