1 :2022/08/28(日) 13:52:15.74 ID:c7sW2/Tr9.net
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中国新聞デジタル
「あ、あ…、あのね」。声を出すときに口や喉元が硬直し、同じ音を繰り返したり、出るまでに時間がかかったりする吃音(きつおん)。100人に1人の割合で発症するといわれる言語障害で、幼少期にはからかいやいじめの対象になりやすい。うまく話せない自分に自信を持てず、苦悩を抱え込む人も少なくない。当事者の生きづらさを解消するには、どんな手だてが必要か。課題を探った。
「音読がある授業の前日は、緊張が半端じゃない。手が震え、指先は血の気が引いたように白くなる」。広島市の中学3年生の少年は消え入るような声で話した。傷ついた体験が頭から離れず、再現を恐れて激しく動揺する「予期不安」と呼ばれる症状だ。
学校生活には、逃げ出したくなるような場面が山ほどある。日直の号令、給食のアナウンス…。教科書をクラスの全員で読みつなぐ「順番読み」は特に苦痛だという。「1分以内に読み終えたら、授業は終わりにする」。教諭の提案に級友が歓喜し、次々に読み進めていく中、少年1人が体を硬直させて、こう考えている。「まるで死刑台に上がらされているみたいだ」
吃音が始まったのは3歳のころ。「ぼ、ぼ、僕ね」と繰り返したり、「おーかあさん」と出だしの音が延びたり…。教員だった伯母からの指摘で、少年の家族は吃音のことを知った。
少年は「あ行」で始まる言葉が特に苦手で、「兄」を「兄弟」、「思う」を「考える」といった具合に、頭をフル回転させて言いやすい表現に置き換えている。思春期を迎えた頃から、笑われたくない一心で、学校では親しい友人以外とはほとんど話さないようになった。
将来を思うと、不安に押しつぶされそうになる。面接試験がない大学を探そうか、社会に出るまでに症状が軽くなればいいのに…。「前に母に話したことがあるんです。僕は思い込みが強いから、催眠術で吃音が治るんじゃないかって」。そう言って、うつむいた。
吃音は、言語の発達が盛んな2~5歳で発症し、原因は特定できていない。人によって症状は異なり、その表れ方も一定ではない。話す場面や相手に左右され、「からかわれると悪化する」ともいわれている。治療法は確立されておらず、当事者は言語聴覚士たち専門家を頼って「楽に発話する方法」を探っているのが実情だ。
また、発達障害者支援法の支援の対象になってはいるが、広く認知されていない。学校でも発話以外に目立った支障がないため、子どもの苦しみは見過ごされやすい。「すらすらと話せない自分が恥ずかしい」「特別視してほしくない」などの理由で、吃音を隠そうとするケースが少なくないこともアプローチを難しくしている。
元県立広島大准教授で言語聴覚士の山崎和子さん(中区)たちが2011年、広島県内の小学校教諭130人に実施した調査では、全体の43%が吃音に対する具体的な支援について、子どもと直接話すことをためらっていた。「意識させては逆効果」「本人が気にしているので話題にしにくい」が主な理由で、学校側にも一歩引いた感があることは否めない。
「子どもの方から『助けて』とはなかなか言えない。からかいやいじめが原因で、引きこもりにつながったケースもある」と山崎さん。「黙って見守るだけではだめ。授業で発表するタイミングを子どもと2人で決めるなど、どんなサポートを求めているのか親身になって聞いてあげて。先生に見守られているという実感が、心の負担を軽くする」と助言する。
https://news.yahoo.co.jp/articles/993eab18ff97059448363332f52eb7833603c704