1 :2022/08/16(火) 23:35:12.33 ID:oJ6dDZ9n9.net
「勝てば1万円、負ければ12万円」「負けそうになるとイカサマも…」“賭け将棋”で生活費を稼いだ真剣師とは何者か?<Number Web>
text by
小島渉
Wataru Kojima
photograph by
Getty Images
将棋界には“賭け”で生計を立てるものたちがいた――。「勝てば1万円、負ければ12万円」というようなレートで勝負を繰り返した“真剣師”とはどんな男たちだったのか?(全3回の1回目/#2、#3へ)
将棋界に真剣師と呼ばれるものたちがいた。賭け将棋で小遣いや生活費を稼いだアマチュアのことで、一部はセミプロのレベルまで達していたという。筆者が将棋を始めたのは2001年だが、実際には見たことがない。どうやら昭和50年代までは全国各地にいたものの、時代が進むにつれて風当たりが強くなり、数は減っていったようだ。筆者はその世界を文献を辿るよりほかに知る方法がない。
「最後の真剣師」と呼ばれた大田学(1914~2007年)は、1978年に第1回朝日アマ名人戦に出場して63歳ながら見事に優勝した。終戦後に30歳を過ぎてから、アマ初段だった将棋に本格的に取り組んだという。
小中学生で奨励会に入るのが当たり前の現代を思うと、かなりの晩学だ。同氏は1996年に放映開始されたNHK朝ドラ「ふたりっ子」のヒロイン・香子に将棋を教える、「銀じい」のモデルになったことでも知られた。真剣師を廃業してから92歳でこの世を去るまで、通天閣近くの道場で指導対局を行っていたそうだ。
いま思えば、筆者も大阪を尋ねて1局教わるべきだった。本気ではないとわかっていても、盤を挟めばふとした手のひらめきや勝負の駆け引きに、歴戦の強者とギリギリの勝負を繰り広げた猛者の迫力を感じることができただろう。
「勝てば1万円、負ければ12万円」“賭け将棋”の仕組み
真剣師は道場にたむろし、賭けに乗ってくれそうなアマチュアを待つ。実力差があっても、一方的に負かしては二度と応じてくれない。客に「頑張れば勝てるんじゃないか」と思わせるのがコツで、わざと緩めてギリギリの勝負を演じたり、何回かに1回は負けてあげる。そうやって生かさず殺さず、長いお付き合いをしたほうが最終的に懐に入る金は多い。
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