1 :2022/07/02(土) 00:40:08 ID:4aIWfa/H9.net
ロシアは4月以降、EU各国の需要家に対して、ロシア最大の天然ガス企業である国営ガスプロムの金融子会社ガスプロムバンクに口座を開設し、ルーブル建てで決済するよう求めている。少なくないEUの国が、この措置に対して反発した。
その結果、ロシアは4月末にブルガリアとポーランドに対して天然ガスの供給を停止した。5月末には、オランダとデンマークに対してもロシアは同様の措置を取った。
一方で、ロシア産の天然ガスに対する依存度が高いドイツとイタリアのエネルギー企業はガスプロムバンクに口座を開設し、ロシア産天然ガスの輸入を続けた。
ところが、6月に入るとガスプロムはドイツに対してもガスの供給を削減するようになった。具体的には、ガスプロムは6月15日と16日の二回にわたり、バルト海経由でロシアからドイツに天然ガスを輸送するガスパイプライン「ノルドストリーム1」の供給を削減した。この措置で、同パイプラインの輸送量は通常から6割減少した。
ドイツ最大のロシア産天然ガス輸入業者であるウニパーも、ロシアからの供給が契約水準より4分の1減少していると発表している。ガスプロムはカナダで修理中のドイツ重電大手シーメンス・エナジー機器の調達の遅れを削減理由に挙げているが、ドイツはこれを否定し、価格の吊り上げ工作であるとロシアを批判している。
ロシアが天然ガスの供給を意図的に絞っているなら、これは「兵糧攻め」に等しい。EU統計局(ユーロスタット)によれば、EUの天然ガスの総供給量(生産+輸入)に占めるロシアからの輸入比率は2020年時点で34.4%に相当する。そのほとんどがパイプラインによる陸上輸送であるため、兵糧攻めの効果は大きい。
■ 石炭火力に回帰する環境先進国のEU各国
EUは3月8日、2035年までにロシア産化石燃料から脱却するための行動計画「リパワーEU」の政策文書を公開した。5月18日にはその詳細も発表されたが、今年中にロシア産の天然ガスの使用量の3分の2に相当する量を削減するという計画は極めて野心的であり、多くの識者がその実現可能性に対して疑義を呈している。
ロシア産の化石燃料のうち、石炭に関する禁輸措置は4月8日に合意に達した対露制裁第5弾のパッケージで、また石油に関する同措置は6月3日に合意に達した同制裁第6弾のパッケージで、それぞれ既に合意に達している。だが、天然ガスに関しては、ロシアへの依存度が高いドイツやオーストリアを中心に慎重論が根強い。
こうした状況を受けて、EU各国では石炭火力発電を復活させる動きが相次いでいる。ギリシャをはじめとして、オランダ、オーストリア、ドイツである。ドイツにいたっては、5月末に主要7カ国(G7)の環境相会議で、議長国として石炭火力を2035年までに段階的に廃止するとする共同声明を取りまとめたばかりだ。
ドイツのハーベック副首相は6月19日に石炭火力の増強に関して声明を出した際に、それを「苦痛(Das ist bitter)」と表現しながらも、冬季に向けたガス備蓄を進めるためには不可欠な措置であるとして理解を求めた。副首相がベーアボック外相とともに共同党首を務める環境政党、同盟90/緑の党の支持者に対する弁明というところだろう。
ヨーロッパにおける石炭回帰への動きそのものは、ロシアが兵糧攻めを仕掛ける以前より「脱ロシア化」を図る観点から模索されていた。当然、ロシアが天然ガスの兵糧攻めを仕掛ける可能性への危機感を持っていたためだが、実際にロシアが兵糧攻めに等しい行動に出たことで、ヨーロッパ各国の石炭回帰の動きにはドライブがかかるはずだ。(以下ソースで)
6/28(火) 11:26配信 JBpress あれだけ日本を批判したのに…脱ロシアを名目に石炭火力に舵を切る欧州の苦悩
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
https://news.yahoo.co.jp/articles/73fb977f175b3143bd581724c15b7357e886c403