1 :2022/03/26(土) 15:50:21.91 ID:IuqvNPef9.net
財政健全化の目標を「骨抜き」にすることで、歳出拡大を正当化する狙いがありそうだ。
新型コロナウイルス禍からの経済回復が遅れ、ウクライナ危機に伴う原材料価格の高騰も逆風となる中、財政規律を後回しする傾向に拍車が掛かっている。
◇ネットの資金需要とは
「経済対策ができなくなる。短期的なPB目標にこだわる必要はない」。
自民党きっての積極財政派として知られる西田昌司参院議員は、3月10日に時事通信のインタビューに応じ、現行目標に否定的な考えを改めて示した。
過去の消費税増税が景気の腰折れを招いたと指摘し、「カレンダーベースのPB目標が経済を毀損(きそん)してきた事実を直視するべきだ」と従来の財政運営を痛烈に批判している。
西田氏は、高市早苗政調会長の直轄組織である財政政策検討本部の本部長を務めている。
同本部は近く中間取りまとめを行い、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」や、今夏の参院選公約への反映を目指す方針。
PB目標の見直しについても、「しっかり言わねばならない」と意欲を示している。
西田氏が財政運営の目安として重視しているのは、「ネットの資金需要」と呼ばれる指標だ。
岡三証券の会田卓司チーフエコノミストが提唱している概念で、日銀の資金循環統計を基に、企業と政府の貯蓄率を合計して算出する。
貯蓄の増加を差し引いても負債が増えている状態だと、ネットの資金需要はマイナス。
企業が投資のために借り入れを増やしたり、政府が財政出動で赤字国債を増発したりするとマイナスが拡大する。
西田氏によると、近年の日本は民間の投資意欲が低く、企業部門は貯蓄超過の状態。
財政赤字を考慮してもネットの資金需要は低調で、「経済を膨らませるエンジンがまったく機能していない」という。
西田氏は、ネットの資金需要を国内総生産(GDP)比でマイナス5%とすることが「健全な状況だ」と説明。
毎年20兆〜30兆円の財政出動を10年間続け、民間の投資を誘発する構想を打ち出している。
◇財政でも「バズーカ」を
自民の若手議員らでつくる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」でも、PB目標がやり玉に挙がっている。
2月9日の設立総会に講師として出席した安倍晋三元首相は、アベノミクス当時を振り返り、
「成長率が金利を上回っている状況で、PB目標に向かってやや緊縮的な政策をとる必要はなかった」と指摘。
「カレンダーベースでPBの目標を置くべきではない」とも述べ、達成に固執しないよう求めた。
議連の会合では、安倍氏の経済政策のブレーンだった本田悦朗元内閣官房参与も2回にわたって講演。
「長年続いたデフレマインドを変えるには思い切った政策がいる。財政では『バズーカ』を撃っていない」として、
黒田東彦日銀総裁が就任直後に実施した大規模な金融緩和「黒田バズーカ」同様の大胆な歳出拡大を訴えた。
さらに「企業が貯蓄超過である限り、財政を使わないとGDPが減ってしまう」とネットの資金需要の概念も議員らに紹介していた。
同議連の会員は3月22日時点で83人に達し、若手議員の間では一定の広がりをみせている。
同議連が今春にまとめる予定の提言には、安倍氏らの考え方を反映し、PB目標の見直しも盛り込まれる可能性が高い。
一方、内閣府は今年1月、PB黒字化の時期を26年度とした上で、歳出改革の努力次第では25年度への前倒しも視野に入るとする試算をまとめた。
成長率の見通しの甘さが指摘されてはいるが、政府は試算結果に基づき、粛々と財政健全化の取り組みを継続する構えだ。
ある財務省幹部は「目標を変更する理由は見当たらない」と断言。
岸田文雄首相や鈴木俊一財務相は、国会答弁などで「財政は国の信頼の礎だ」と繰り返し、PB黒字化の旗を堅持する姿勢を鮮明にしている。
政府内では間もなく、今夏の閣議決定に向けて「骨太の方針」の策定が本格化する。
昨年の同方針には25年度のPB黒字化が明記されたが、今年は書きぶりをめぐる政治からの圧力が強まりそうだ。
7月に参院選を控えて与党が「ばらまき」モードに入る中、目標の取り扱いが注目される。(経済部・赤間央)(了)
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