1 :2021/10/14(木) 15:11:05.37 ID:STapX1HO9.net
「ワクチンへの慎重な意見は口にしにくい」と言う男性。ネット上では反対派への暴言も少なくない=9月、大分県臼杵市
9月30日、大分県の新聞に広告が載った。
「本当に必要ですか? 子どもへのワクチン」。臼杵市の自営業男性(43)が呼び掛け、掲載費約115万円の半分は賛同者の寄付で賄った。
「接種をどんどん進めて、早く普通の生活に戻ってほしい」。そんな考えが揺らいだのは5月末。政府が対象を「12歳以上」に引き下げてからだ。
中長期的な安全性は? 副反応は? 次々に浮かぶ疑問。情報を探すうち、厚生労働省が発表する「接種後の死者数」に目が止まった。因果関係は認められていないが、9月12日時点で1190人に上る。一方、インフルエンザワクチン接種後の死者は年に数人。「そもそも未成年者の重症例は少ない。子どもに打たせるべきではないのでは…」
市、教育委員会、PTA連合会を回り、市民に不安要素を伝えるべきだと訴えた。だが回答は「正しい情報を見て判断してほしい」。 正しい情報とは何なのか、自分が間違っているのか―。自問自答を繰り返し、思い至った。「リスクに関する情報が十分に届けられていない」
「陰謀論」は信じていない
大分県内でも「12歳以上」への新型コロナウイルスワクチン接種が進んでいた9月、臼杵市の男性はチラシを手に中学校の校門に立った。子どもへの接種に疑問を投げ掛けるためだった。
効果だけでなくリスクも伝えるべきだと悩んだ末の行動。だが、思いが募るほど友人は離れ、周囲の目を気にして父親は嫌悪感を示すようになった。
ウイルスの存在を否定する荒唐無稽な「陰謀論」は信じていない。打つ人の判断も尊重している。それなのに、「ネットのデマに操られている」「非国民」といわれのない言葉を浴びせられる。リスクに対する慎重な姿勢が、国を挙げてワクチン接種を推奨する今の社会では、“変人扱い”されていると感じている。
「ワクチンの安全性に重大な懸念は認められない」と強調する厚生労働省。接種後の千人を超す死者数について担当者は「注目度が高い医薬品では医療機関からの報告が増える傾向にある」、インフルエンザワクチンとの死者数の開きは「異なる医薬品を単純に比較できない」と解説する。「これが『正しい情報』なのか」。男性は納得できないでいる。
打つ派、打たない派が互いに敵視
東京女子大の橋元良明教授(情報社会心理学)によると、ネット社会では、ある情報に同意見の人が集まる「エコーチェンバー現象」が起きやすい。そこで信じた情報は確信に変わり、時に反対意見を敵視する。これは打つ派、打たない派、双方に言えるという。橋元氏は「科学的なデータを基に国が説得力のある情報を出さない限り、意見の分断は続くだろう」と、「正しい情報」の必要性を説く。
それが不十分な社会で、何が起きたのか。
「1日100万回」―。ワクチン接種率の向上に懸命な菅義偉前首相が掲げた目標に向かい、各自治体は競うように接種を急いだ。
リスクを懸念する長崎市の自営業女性(45)は、あいさつのように交わされる「ワクチン打った?」に気が重くなる。さまざまな理由で打たない人もいるのに、あたかも打つことが前提の空気感。加えて、政府は接種と行動緩和を引き換える「ワクチン・検査パッケージ」を検討し、社会もそこに向かっている。「当初は差別につながると否定していなかったっけ…」と当惑する。国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)は、ワクチンは個人が納得した上で接種するものだとし「国は安全性や効果について丁寧な説明を尽くすべきだ」と言う。
福岡県の30代女性は、高齢の家族に配慮して接種したものの、ワクチンへの不安や疑問を口にしにくい社会に違和感が拭えない。「未知のウイルスへの恐怖は許容されるのに、なぜ、未知のワクチンへの恐怖は認められないのでしょう」
(森井徹)
新型コロナウイルスの出現であらわになった社会のひずみ。衆院選を機会にその姿、在り方を見つめたい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d29fe8e55a0445e4ef53d4589173467702977c7c