1 :2021/03/18(木) 09:12:00.95 ID:q3sLnfTA9.net
日本テレビの情報番組「スッキリ」で、アイヌ民族を傷つける表現が放映され、地元の北海道を中心に波紋が広がっている。
ネット交流サービス(SNS)では、発言したお笑い芸人への“攻撃”にも発展。発言に便乗し分断をあおるような発言も出てきた。
テレビ局側の認識の甘さを指摘する意見に加え、アイヌの側からは抗議や憤りだけでなく、「歴史を学ぶきっかけに」と願う声も出ている。
発端は、今月12日午前に放送された「スッキリ」でのお笑い芸人、脳みそ夫さんの表現。アイヌの女性をテーマにした
ドキュメンタリー作品の紹介を受け、「この作品とかけまして動物を見つけたととく。その心は、あ、犬」と発言した。内容は事前収録だった。
放送直後からSNSで問題視する声が相次ぎ、日本テレビは放送当日の午後に「担当者にこの表現が差別に当たるという認識が不足しており、
放送前の確認も不十分だった。アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現で放送してしまった」とのコメントを出した。
脳みそ夫さんも14日に「勉強不足を痛感」とSNSに直筆文書を公開し謝罪した。
インターネットでは事態が沈静化せず、脳みそ夫さんを「差別主義」などと指弾する書き込みなどが相次ぐ一方、
発言に乗じて「アイヌ民族なんていない」「何が悪いのか」と分断をあおる発言もあった。
多くのアイヌが暮らす北海道では反響が大きく、市民団体や政党からも抗議や申し入れが相次いだ。
道アイヌ協会は13日、日本テレビに放送前に問題視しなかった経緯などの説明を求め、16日には大川勝理事長が
首相官邸を訪れ政府に対応を申し入れた。
アイヌや研究者で作る「アイヌ政策検討市民会議」は15日、「ネット上の差別する側にどのような影響を与えたのかなどを調査し、
メディアとして今後のあるべき姿を再構築すべきだ」と日本テレビを厳しく非難。政府も加藤勝信官房長官が同日の記者会見で
「アイヌの人々を傷つける極めて不適切なもの。放送局に厳重な抗議をした」と述べた。
「小学生のころ、まさにその言葉で後ろ指をさされ笑われた。まさか全国放送で流れるとは。怒りで体が震えた。
差別の芽は常にある」。道内でアイヌの権利回復に取り組む「コタンの会」代表の清水裕二さん(80)は怒りをあらわにする。
「差別的意味に気づかなかったとの日本テレビのコメントはより深刻。個人や放送局レベルの問題ではなく、日本社会で、
なぜ先住民の権利・文化の復興が必要かが理解し共有されていない」と北海道大アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授は
問題の根深さを指摘する。
2020年7月には国立アイヌ民族博物館を中心とした民族共生象徴空間(愛称ウポポイ)がオープンするなどアイヌへの関心や理解が深まり、
内閣官房による同12月の世論調査では、アイヌ民族が先住民という認知度が初めて9割を超えた。
だが、加藤教授は「先住民族の認知と差別禁止など施策の必要性が結びついていない」と指摘。
「諸外国では国の政策が先住民族をどう傷つけてきたか、国のトップが和解のための表現を公に行い、全体に周知を図りけじめをつけてきた」と、
日本との温度差を問いかける。
北海道白老町でカフェ「ミナパチセ(アイヌ語で『みんなで笑う家』)」を営む田村直美さん(49)は中学生の頃から、
今回問題となったのと同じフレーズでいじめられ「あ」「いぬ」という発音にすら反応するほど嫌だったという。
彫りの深い自分の顔が好きになれず、子どもに遺伝しないよう願ったこともある。
「多くのアイヌが苦しんだ言葉。放送で傷ついた人は多い」と話す。
ただ、憤りや失望だけでなく共生への期待も持ち、今回の問題について「発言は教育の問題など、さまざまな要因がある。
若い世代のアイヌはアイヌを誇りに発信をしている。さらなる分断のきっかけにするのではなく、アイヌの歴史を学んで
知る契機にしてほしい」と訴えた。