1 :2020/12/20(日) 00:07:00.13 ID:CAP_USER9.net
ストーリーは、ドラえもんと過去に戻ったのび太が、おばあちゃんから「のびちゃんのお嫁さんに会いたい」と言われたので、「しずかちゃんと結婚する」と約束。ところが、ドラえもんから、結婚式当日に逃げ出す未来の自分の姿を見せられ、さあ大変。約束通りの未来にするため、奮闘するという物語。
ん? ヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースの「The Power of Love」(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』主題歌)が流れてきそうな…。
宇多丸が「駄作中の駄作」とバッサリ
そんな本作を観たヒップホップグループ「RHYMESTER」の宇多丸 (51)による“酷評”が一部で話題になっているのです。12月11日、自身のラジオ番組『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)内の映画時評コーナーで、「蛇足にして駄作中の駄作」とバッサリ斬り捨てていました。
まず、“聖女”として描かれるしずかちゃんを、マッチョに覚醒したのび太が救うという構図の古臭さを指摘。そのうえで、ダメダメなのび太の「僕は僕が幸せになるために戻ってきた、それがしずかさんを幸せにすることだから」という宣言から、「よくできました」と全て受け入れるしずかちゃんに至るやり取りを全否定。
「え? あんたらなに? なにが『よくできた』なの? しずかちゃん、なにを認めたの?」と怒り心頭で、「のび太が無制限に甘やかされ続ける、救い難い駄作」と評したというわけ。
菅田将暉が歌う主題歌も、大甘な“ドラ泣き”ねらい
さて、筆者はこの映画を観ていません。なのですが、この宇多丸氏の言葉には相当な真実味があると感じます。なぜなら、菅田将暉(25)が歌う主題歌「虹」(作詞、作曲:石崎ひゅーい)を聞けば、だいたい想像がつくから。
ミディアムテンポでソフトなサウンドのバラードに、平穏無事な家庭生活こそ至高といった具合の歌詞が合わされば、極めて体制的なポップスが出来上がるのは目に見えています。しかも、MVまでご丁寧にこれを補強している。
楽曲のテイストと歌詞の内容が聞き手のリアクションまで用意しているので、結果泣くのが唯一の正解になってしまう。映画とセットになると、“ドラ泣き”がただのキャッチコピー以上の金科玉条になってしまうのですね。
これは秦基博(40)が歌う前作の主題歌「ひまわりの約束」から続いている傾向で、『STAND BY ME ドラえもん』における映画と音楽の関係は、ショートケーキに砂糖をふりかけて食べているようなものなのです。
お約束通りの「泣き」を求める
前作についても、「みなさん、これお約束だからわかってね、みたいな甘えた作り」「ドラ泣きという売りは心底下品」(2014年、「ウィークエンド・シャッフル」での発言)と辛辣だった宇多丸氏が、今作は「それすら破壊してしまった」と語るほどなのですから、失望感は相当なもの。
あらかじめ泣きたい客のために、泣ける仕掛けだらけの映画を提供する制作サイド。大味でハイカロリーな感動による利害の一致は、あまりにも不健康と言わざるを得ません。
憤懣やるかたないといった宇多丸氏の物言いは、映画そのものを厳しく批評するというより、日本にくすぶるいびつな精神状態への警鐘を鳴らしているように感じました。
主題歌「虹」も、その症状のひとつなのでしょう。
<文/音楽批評・石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)
https://news.yahoo.co.jp/articles/340d98bd17d918b25006e4145d3b6ccf2f6908b0