1 :2020/11/25(水) 22:19:15.97 ID:KIiCpN7l9.net
会社員の女性、Uさんは3年前、韓国旅行へ行こうとして飛行機に乗れなかったことがある。パスポートの
姓と航空チケットの姓が違ったため、搭乗口で同一人物と認定されなかったのだ。Uさんはその10カ月前に
離婚したが、多忙だったことや手続きの煩雑さからパスポートの名字を旧姓に戻していなかった。飛行機の
格安往復チケットを申し込む際、旧姓に戻したクレジットカードを使ったことから、食い違いが生じたのである。
すぐチケット会社へ電話したが、変更は認められず払い戻しも受け付けてもらえなかった。結局新たに翌日の
チケットを購入して現地へ。3泊4日の旅行は2泊に短縮されてしまったという。
「直後は、『私ってドジだな』と悔やむ気持ちが大きかったのですが、今は夫婦別姓が認められていたら
こんなに面倒な思いをしなくて済んだのに、と思います」とUさんは語る。パスポートの氏名変更には、戸籍抄本
または戸籍謄本、住民票などが必要になるうえ、6000円の手数料がかかる。手続きのために仕事を休む必要が生じることも。
・いまだに96%が夫の姓を選ぶ
結婚しても旧姓を別名として併記する例外的規定もあるが、それは主に二重国籍や国際結婚、海外での仕事で
旧姓を使うことが証明できる人限定だ。しかも、世界で唯一夫婦同姓を法律で義務づけている日本独自の
仕組みであるため、外国に入国する際説明を求められることもある。しかしこうした問題は、誰もが生涯同じ姓
を使うことができれば発生しない。
日本では、第二次世界大戦後の民法改正で、「夫または妻の姓を名乗る」ことができるようになったが、約96%の
カップルが夫の姓を選ぶ。それは、男性の姓を選ぶ慣行が圧力としてカップルにかかっているからとも言える。
結婚後も働き続ける女性が多数派になり、離婚再婚が珍しくなくなった今、現行法は多くの女性とその子どもたちに
不便を強いてはいないだろうか。旧姓などの通称が認められる職場も増えているが、パスポート以外にも、健康保険証
や運転免許証などの公的証明書は戸籍上の姓を使わざるを得ない。場面ごとに名字を使いわけることも煩雑である。
・夫婦別姓を求める人が多数派になっている
夫婦別姓を許容する、あるいは求める人が多数派になった要因は、大きくわけて2つ考えられる。1つは仕事や生活上
の不便。働き続ける女性が珍しくなくなった今、姓が変わると営業上の不利益を被る人は多い。研究者や医者などの
専門職はもちろん、客に名前を覚えてもらうサービス職や営業職でも困る。また、結婚・離婚の事実を明らかにする
姓の変更は、個人情報の強制的開示になる可能性もある。
2つ目の要因は、現代社会において、姓がアイデンティティと直結することだ。夫婦同姓規定を違憲として、2018年に
国を相手取った裁判を起こした原告の1人、医師の恩地いづみさんはペーパー離婚をしている。「生まれたときからの
名前は、私そのもの」と、2018年7月11日の朝日新聞記事上でその理由を語った。
夫婦同姓強制が法制化されたのは、1898年に「妻は原則夫の姓を名乗る」とする明治民法が施行されてから。明治初期
には男女同権が議論され、夫婦は別姓だった。同姓強制が社会に受け入れられたのは、庶民が姓を持てなかった江戸
時代の意識も残っていて、それほど重視されていなかったからではないか。
また、当時は共同体の中で暮らす人が大半だった。今でもそうだが、共同体では同姓の親せきが多数暮らしているなど
して、屋号や下の名前で呼び合うことが珍しくない。自分を、共同体や故郷の一部と感じていた人も多かっただろう。