1 :2020/11/23(月) 16:14:39.64 ID:+S42ecas9.net
ライトノベルの読者年齢が上がっているとよく言われる。中心読者は30代である、と。
筆者も何人かの編集者にヒアリングしてみたが「昔と比べると中高生読者は減った」「平均年齢が上がった」と現場でも言われているようだ。
それではラノベはもう10代に読まれなくなったのかというと、これが微妙なところだ。
中高生のラノベ受容、知られざる実態
異世界ファンタジーなどのジャンルは基本的に年齢が上にスライドした一方、2011年から19年まで刊行された渡航
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(ガガガ文庫。通称「俺ガイル」)以降の青春ラブコメものや、
2019年から刊行が開始された二丸修一『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』(電撃文庫)などの幼なじみもののラブコメは
比較的若い読者が付いていると言われている。
もうひとつ、TVアニメ化されて話題になると中高生にも“下りてくる”(広まる)ことが多い。
アニメ化以前には20〜40代が中核読者だった伏瀬『転生したらスライムだった件』(GCノベルス)や
丸山くがね『オーバーロード』(KADOKAWA)も、アニメが爆発的な人気を呼ぶと、毎日新聞社と
全国学校図書館協議会が小中高校生を対象に行う「学校読書調査」の読んだ本ランキングや、
トーハンが発表している「『朝の読書』で読まれた本」に顔を出している。
もっとも、2010年代初頭までは10代が中核的な読者であり、アニメ化によって20代以上にも
広がるというものだったのだから、原作のコア読者とアニメ化によって届く層が逆転しているのだが。
ここで興味深い事実がある。
『俺ガイル』は、宝島社が毎年刊行し、投票形式で年間ランキングを決めるムック『このライトノベルがすごい!』で
3年にわたって1位を取って殿堂入りを果たし、シリーズ累計発行部数が1000万を超えているにもかかわらず、
学校読書調査や「『朝の読書』で読まれた本」のランキングには、ほとんど顔を出したことがない。
2017年に行われた第63回学校読書調査の高校2年生男子の6位(調査対象者519人中4人が読んだと回答)に入った一度きりである。
なお、『ソードアート・オンライン』(電撃文庫)や西尾維新の「物語」シリーズ(講談社)は刊行当初から約10年にわたってランクインし続けている。
また、入れ替わってはいったが2010年代にランクインしたことのある作品として、『デート・ア・ライブ』、『この素晴らしい世界に祝福を!』
(以上富士見ファンタジア文庫)、『ノーゲーム・ノーライフ』、『Re:ゼロから始める異世界生活』、『ようこそ実力主義の教室へ』
(以上、MF文庫J)などがある。
ライト文芸やボカロ小説(ボーカロイド楽曲を原作とした小説)のような広義のライトノベルまで含めれば
『ビブリア古書堂の事件手帖』『かくりよの宿販』『神様の御用人』、有川浩作品、『悪ノ娘』『カゲロウデイズ』『告白予行練習』、
フリーゲーム『青鬼』のノベライズも人気作品として入っている。
学校読書調査は毎年各3000〜4000人の中学生、高校生の男女(各学年男女各500人前後)を対象にして「5月1か月間で読んだ本」
について尋ねており、中学生ではそのうち5、6人、高校生では2、3人に読まれればトップ20に入る。中学生500人に1人、
高校生1000人に1人読んでいれば入る。
にもかかわらず『俺ガイル』は一度だけ、しかも一学年にしか入らず、しかし、累計1000万部超のヒットなのだ。
ということは、高校生より上の年齢を中心に読まれていたのだろうと考えざるをえない。
もちろん、シリーズが長期化すれば読者の平均年齢は上がる。だが『ソードアート・オンライン』(『SAO』)や「物語」シリーズが
2010年代以降ずっと中学生を新規読者として獲得してきたことと比べると、青春ラブコメといういかにも中高生が好きそうなものに
一見思えるジャンルにもかかわらず「下への広がらなさ」が際立っている。
たとえば2015年のデビュー以来、学校読書調査や朝読ランキングで複数年にわたって圧倒的に人気の住野よると比べれば、
「中高生に支持されている」とはこれらの調査の結果からは言いがたい。
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