1 :2020/09/02(水) 21:52:28.57 ID:I4oqB+tO9.net
グーグルが開発した54量子ビットの量子コンピューター「Sycamore」は従来型コンピューターが1万年かかる計算を200秒で解いた/Credit:James Crawford
Googleの研究者たちによって、化学反応を量子コンピュータでシミュレートすることにはじめて成功しました。
シミュレートされた反応自体は非常に簡単なものですが、量子コンピュータのより汎用的な用途に向けた大きな第一歩です。
8月28日に「Science」に掲載された研究によると、使用されたのは「Sycamore(シカモア)」と呼ばれる54量子ビットを備えた量子コンピュータとのこと(量子ビットについてはこちらの記事も参考に)。
このSycamoreは2019年に従来型のコンピュータが1万年かかる計算を僅か200秒で解き、量子コンピュータの優位性(量子超越性)を実証したことでも有名です。
量子コンピュータの参戦により、化学シミュレーションの世界に激震が訪れようとしています。
これまで既存のコンピュータを用いて、多くの化学反応シミュレーションが行われました。
しかし化学反応に参加する原子や分子が増えるたびに計算は指数関数的に複雑になります。
そして悲しいことに、現在のコンピュータには、そのような爆発的な複雑さの上昇についていくことが厳しくなってきています。
一方、量子コンピュータにとって計算量の増加はそれほど苦にはなりません。
量子ビットを1つ増やすごとに処理能力が2倍になるため、適切なアルゴリズムを用いれば、計算能力もまた爆発的な増加が見込めるからです。
今回の研究で使われたSycamoreは54量子ビットを備えており、2の54乗個の演算を並列計算により同時に行うことが可能です。
今回の研究でシミュレーションの対象となったのは、ごく簡単な化合物で2つの窒素原子と2つの水素原子から構成される「ジアゼン分子」です。
このジアゼン分子には水素原子の位置が上の図のように同じ方向にあるパターン(シス)と、異なる方向にあるパターン(トランス)の2つの状態が知られています。
シミュレーションではこのジアゼン分子が2つの状態に変化させる過程が計算されました。
結果、量子コンピュータを用いた反応シミュレーションは、既存のコンピュータによる計算値、及び現実世界の測定値と一致しました。
今回シミュレートされた反応は非常に単純なものであり、一般に普及しているノートパソコンでも十分再現可能です。
しかし、この最初の一歩は計算化学の分野にとって非常に大きな前進となります。
量子コンピューターは量子ビットを増やしたり、簡単なアルゴリズム(計算方法・計算手順)の変化でスケールアップが望めるからです。
そのためグーグルの研究者たちは、将来的には全く新しい化学物質を計算によって開発することも可能だと述べています。
現在、既存のコンピュータの性能を量子コンピュータが凌駕しつつあります。
化学実験は実験室ではなく、パソコンの前でするという時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれませんね。
https://nazology.net/archives/67951