1 :2020/07/17(金) 11:32:15 ID:kIrDFy9S9.net
台湾や韓国では、検査数を素早く増やし、ハイテクを駆使して、欧米のような経済的損失が甚大なロックダウン(都市封鎖)なしで第1波を切り抜けた。
ところが、日本ではオリンピックへの配慮からか政治的な初期対応は随分と遅れたにもかかわらず、やはり死亡者数が非常に少ない。
■いち早くロックダウン
行政と各施設で以前から積み重ねてきた地味なインフルエンザ感染予防対策などが大きく寄与している。
だがそれ故に十分に評価されるに至っていない。この点を見過ごし、介護施設・事業関係者の尽力への評価と資源配分を怠ると、
次の感染の波を無事に超えられない可能性がある。
日本では、厚生労働省が1月29日に都道府県各自治体の介護保険担当者に所管の高齢者施設に対して、
新型ウイルスについての周知を徹底するように連絡。2月24日には、面会制限と物資の搬入についても感染に留意して施設内で行わないように指示した。
多くの介護施設側はこれを面会禁止の通知と受け取り、2月末までには介護施設の「ロックダウン」が起こった。
日本政府が介護施設に注意喚起し面会禁止にしたのは、香港の1月下旬、韓国の2月中旬に続くもので、非常に早かった。
筆者が5月8日に首都圏の20ほどの介護施設のウェブサイトを確認したところ、面会制限のみの施設が1カ所あっただけで、
その他の施設は全て2月初旬から末日までにかけて面会・外出禁止を決めていた。職員による消毒などの感染予防対策は97%が行っていた。
日本人はこれを聞いても当たり前だと思うかもしれないが、とんでもない。
死亡者数の多い欧米諸国では、イタリア、スペイン、アメリカ、イギリス。
これらの国々では、コロナ死亡者の半数近くが老人ホーム・介護施設での感染が原因だ。
イギリス、イタリアとアメリカでは、高齢者を病院から老人ホームに移動させ感染を広げたり、
施設内で感染者を隔離していなかったりと人災に匹敵するような判断ミスも高齢の施設入所者の犠牲を広げた。
大型のクラスターとなり死亡者が発生してからやっと、政府が高齢者施設の重要性に気が付いた状況だった。
一方、驚くべきことに、170万人以上が高齢者施設に入所・通所している世界一の高齢化社会である日本で、施設での集団感染が少ない。
厚労省が3月31日に公表した医療・福祉施設でのクラスターは14件あり、そのうち3件のみが高齢者施設であった。
■自動的に対策が作動した
残念ながら、厚労省はこのデータをアップデートしていないので、より新しいデータとしては、
共同通信社が独自に各自治体に問い合わせして集計した5月8日時点のものを国際比較に利用してみよう。
これによると、日本でコロナによる死亡と認定された人のうちの14%が施設での感染と推計される。
ICU(集中治療室)の病床数と医療従事者数の人口比が日本よりも優れていたドイツでさえ、死亡者の39%が高齢者施設における感染が原因であった。
国際的にコロナ対策で評価が高い韓国でも34%だ。
他の東アジア諸国と違い、SARS・MERSで苦汁をなめていない日本であるが、新型インフルエンザ等への対策として従来から、
高齢者施設内に感染対策委員会を設置するなど、細やかなガイドラインとマニュアルの整備がなされ、改訂されてきた。
そして、インフルエンザ流行時には感染予防として高齢者施設の面会制限などが以前から行われてきた。
日本では施設の「ロックダウン」に関して入所者の家族らが慣れていたことも社会的には重要な点だ。
また、感染症対策がトップダウンというよりも厚労省・各自治体・施設内でルーティン化されていたので、
政治の介入抜きでコロナ対策がほぼ自動的に作動した。欧米では医療従事者でさえインフルエンザの季節でもマスクなしで患者に接しており、
老人ホームなどではさらに意識は低い。
以上の国際比較を鑑みると、日本の介護・感染症予防行政、そしてマスクさえ足りず、
入所者の家族からの寄付などを受けながら頑張った日本の高齢者介護従事者らの苦労と貢献は明白だろう。
コロナ第1波での対策の成功は、日本の介護制度が世界に誇れるものであることを示すものだ
全文はこちら マルガリータ・エステベス・アベ(米シラキュース大学准教授)2020年7月16日(木)15時10分
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