1 :2020/06/06(土) 12:12:58 ID:frPDL83m9.net
北海道新聞
「私たちは見捨てられている」
タイの性風俗従事者が苦境 森でテント暮らしも 客が消え生活困窮
新型コロナの感染が拡大する前のタイの歓楽街。大勢の外国人客でにぎわっていた=1月、バンコク(中川明紀撮影)
【バンコク森奈津子】新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため大規模な行動制限措置がとられたタイで、経済支援の網から漏れた生活困窮者たちがいる。その一つが売春で生計を立てている人たち。国連の推計で国内に30万人いるとされ、観光産業を影で支えてきた存在だが、家賃が払えず森の中で共同生活をして飢えをしのぐ人もいるなど苦境に立たされている。
「私たちの存在は無視され、見捨てられている。国籍を持たない少数民族や外国人などの同業者は行き場はなく、今も森で生活を続けている」。タイ中部のリゾート地パタヤ近くの森に最近まで暮らしていたムックさん(29)=仮名=は淡々と語った。
経済発展が遅れているタイ東北部出身のシングルマザー。子供を預けた両親へ仕送りは欠かせず、家賃を節約するため、以前から同業の仲間約20人とパタヤ周辺の森の中で生活してきた。トタンにビニールシートをかけた簡易な小屋で寝泊まりし、夜になると歓楽街の路上で客を探す。ベトナム戦争時に米軍の保養地だったパタヤは今も欧米や日本からの観光客に人気が高く、ムックさんの客も7割超が外国人だったが、新型コロナの感染拡大で生活は一気に厳しさを増した。
2月下旬、地方行政機関が「集団感染を生みかねない」と懸念し、森から追い出された。一時はアパートの一室を借り商売を続けたが、3月中旬以降にナイトクラブやホテルが相次ぎ閉鎖。外国人の入国禁止で客はほぼゼロになり、家賃も払えず、再び森へ戻った。
売春する人たちの支援団体「スイング」が、食糧やドーム形テントを支給するなど支援に乗り出したが、4月下旬には警察によって再び強制的に森から排除された。ムックさんは今、同業者が住むアパートに居候するが、行き場がなく今も森で暮らす人が数多くいるという。
「政府は見て見ぬふり」
タイ政府は、新型コロナの影響による生活困窮者の救済策として、失業保険がない自営業者や非正規労働者を対象に月5千バーツ(約1万7千円)を支給する。しかし、売春はタイでも非合法で、雇用の証明もできず、ほとんどが受給資格を得られない。
支援団体の設立者でもある、タマサート大のチャリダポーン准教授(政治学)は「多くは家族を養わねばならず、貧困から抜け出すには仕事の選択肢は少ない。ある意味でタイの観光業を支えてきたのに保障はなく、政府は見て見ぬふりをしている」と批判する。
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