1 :2020/05/28(Thu) 17:06:21 ID:PxEq6Tpb9.net
世界屈指の高級ブランド各社は欧州の伝統を重んじる。だが、その未来はこれまで以上に中国への依存を強める傾向にある。この矛盾が長期的にどのように表れてくるにせよ、差し迫った問題はホームグラウンドである欧州に散らばる多数の店舗だ。
コロナ危機がビジネスモデルをどのように変えるのかについては全く不透明だが、デザイナーブランドが中国人買い物客と中国国内店舗の売り上げにこれまで以上に依存することになるのは間違いなさそうだ。
新型コロナウイルス流行の影響を受ける以前に、ハンドバッグ「バーキン」で知られる仏エルメスやトレンチコートで有名な英バーバリーなどのブランドは既に、世界全体の売り上げの3分の1以上を中国人消費者から得ていた。中国人は2011年、米国人を抜いて国籍別にみた高級品ブランド購入額でトップに立った。今回の危機で、中国の消費者が欧米の消費者よりも早く高級なハンドバッグや時計への消費意欲を回復させ、この傾向をさらに加速させるかもしれない。バーバリーは22日、2020年3月期の暫定決算を発表し、再開した中国本土の一部の店舗では、買い物客が列をなしていると明らかにした。
国際通貨基金(IMF)は、現在のコロナ危機による経済への影響は中国よりも欧米の方が大きいとみている。さらに中国の高級ブランド消費層の年齢は欧米より20歳ほど若く、負債も少ないため、可処分所得の多くをデザイナーブランドのぜいたく品に使う余裕がある。中国でロックダウン(都市の封鎖)が解除され、買い物客がショッピングモールに向かうにつれ、株式アナリストが「リベンジ消費」と呼ぶ兆候が既に表れている。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは、2025年までに世界の高級ブランド製品販売高のうち最大で49%を中国人が占めるようになると推計。従来予想の46%から引き上げている。
かなり早めに中国主導で消費が回復するとの期待は、一部の高級ブランドの株価が今年、市場の業績予想に反して底堅さを見せている理由となっている。見通しによると、高級ブランド業界の今年の売り上げは前年比35%減と、減少幅は2009年の3倍だ。ところが、エルメスの株価は年初来3%上昇しているほか、業界の指標銘柄とされる仏高級ブランドグループLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは14%安にとどまっている。ストックス欧州600指数は17%の下落だ。
だが、感染に対する懸念で遠距離の旅行が難しくなっている現状では、中国人客の消費取り込みは以前より難しくなっている。中国人消費者は昨年、高級ブランド製品購入の70%を海外ないし香港で行い、こうしたブランド品をかなり安く購入できる欧州に頻繁に旅行していた。証券会社ジェフェリーズのアナリストによる価格比較では、仏ルイ・ヴィトンのハンドバッグ「スピーディ25」の上海での値段は、欧州の店舗より46%割高だという。
飛行機の乗客数が2023年までコロナ危機以前の水準には戻らないと予想される中で、高級ブランド業界は中国人の国内消費を必要としている。
ベインの推計では、中国本土での売り上げ自体は、2020年代半ばまでに2019年の水準の約3倍の880億ユーロ(約10兆3271億円)に達する見通しだ。伊グッチやバーバリーなどの一部のブランドは既に中国に多数の店舗を構えている。一方で、LVMHグループの仏クリスチャン・ディオールなどはまだ、中国国内店舗が少ない。これらのブランドは、店舗の新設のほか、Eコマース(電子商取引)経由の消費取り込み拡大を狙ったオンラインプラットフォームや物流への大規模投資を進める公算が大きい。
中国での販売能力増強は当然、欧州にとって不都合な帰結をもたらす。ブランド各社は足元にある多くの店舗の営業を継続できるか否かという難しい決断を迫られるだろう。例を挙げれば、プラダは現在、欧州で230店舗を運営している。昨年、欧州の高級ブランド店舗の売り上げは、半分が海外旅行客によるものだった。